・フルミストとは

 フルミストは、鼻に噴霧して接種するタイプのインフルエンザ生ワクチンで、痛みがなく、注射が苦手な子どもに推奨されます。

 欧米では長年使用され、2023年に日本で薬事承認されました。2024年から導入が進められています。当院でも今年から接種を開始します。

 接種年齢は2歳から18歳に限定されています。

 接種後に軽い風邪のような症状が出ることがありますが、重篤な副作用は稀です。

 

・注射との違い

 1番の違いはもちろん注射しなくてよいことです。両方の鼻に1回ずつ点鼻液を噴霧します。

 注射は12歳までの子は2回接種が推奨されていますが、フルミストは1回の接種で予防効果が得られるため、追加の接種をする必要がありません。これにより、複数回病院に通う手間が省け、保護者の方にとっても非常に便利かと思われます。

 あと注射は不活化ワクチン、フルミストは生ワクチンという違いがあります。

 不活化ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性や感染する能力を失わせたもの(死んだウイルスや細菌)を原材料として作られています。

 一方、生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性や病原性を弱めたもの(生きているウイルスや細菌)を原材料として作られます。

 接種後、1週間程度はワクチンウイルスが体外に排出されると言われているので、免疫力の低下している方との接触は避けるようにしてください。

 フルミストは鼻から投与されるため、インフルエンザウイルスが体に入る自然な感染経路に近い形で免疫反応を引き起こします。そのため、免疫応答が注射型のワクチンに比べて強化される可能性があり、小児においてはより効果的であるとの期待がされています。

 効果の持続も皮下注射によるワクチンより長く、皮下注射の効果が約5か月間持続するのに対し、フルミストでは約1年効果が持続するとされています。

 

・副作用について

 フルミストは生ワクチンであることもあり、鼻汁・鼻閉・咽頭痛・咳・軽度の発熱・倦怠感・筋肉痛といった軽度の風邪症状を生じる場合があります。通常は数日以内に治まるとされています。

 アナフィラキシーや喘息症状の悪化などの重篤な副作用が生じる可能性は非常に稀とされています。

 

・フルミストがうてない方

  • 37.5℃以上の発熱がある方
  • 重篤な急性疾患、慢性疾患(心血管系、肝臓、腎臓、血液疾患)がある方
  • 喘息のコントロールの不良の方
  • 免疫不全、または免疫不全の人と接触する機会がある方
  • 副腎皮質ホルモン剤(経口剤、注射剤)、免疫抑制剤(経口剤、注射剤)を使用している方
  • アスピリンを内服中の方
  • 重度の卵アレルギーがある(アナフィラキシーをおこしたことがある)方
  • ゼラチンアレルギーがある方
  • 鼻づまりが強い方や鼻の処置が苦手で大泣きしてしまう方などは、ワクチンが鼻の奥まで届かず効果が不十分となってしまう可能性がありますので、注射のワクチンの方がおすすめです。
  • アトピー性皮膚炎の治療で、デュピクセント®などの生物学的製剤を使用中の方は、生ワクチンである「フルミスト」は使用できませんので、従来の「注射型」のワクチンの接種をお願いします。

 

・他のワクチンとの間隔について

 経鼻生ワクチンでは、他のワクチンとの間に接種間隔を空ける必要はありませんので、他のワクチンの接種歴・接種予定にかかわらず接種が可能です。