舌下免疫療法を検討中の方に知っておいて頂きたいことをもう少し書いておきます。
舌下免疫療法は長期間投薬を続ける治療になります。
そのためその治療が本当に適応になるのかどうかを採血で事前に調べる必要があります。スギ花粉に対する抗体が陽性となるクラス2以上の患者さんにおいて治療がすすめられます。当院にて採血を行うこともできますし、以前に採血をしてスギ花粉の抗体が確認できていれば、それを元に治療開始の判断をいたします。その場合には必ず治療相談時に以前の採血結果を持参してください。
スギ花粉の抗体が確認できたら、クリニックにて初回投与を行います。診察室内で実際に舌の下に錠剤を入れて、飲み込んでもらいます。その後、30分は院内にて副作用の出現がないかどうか待機をしてもらいます。
2日目以降は自宅にて1週間投薬をしてもらいますが、初めの1週間は初期投与量とされる少なめの量となります。2週目からは維持投与量といって量が増量になります。その量でも副作用の出現がない、もしくは副作用がアレルギー薬の投薬にてコントロール可能な範囲と判断できた場合には、以後からは月に1回の受診にて投薬を続けていくこととなります。
アレルギーがあるとわかっている人に原因抗原を投薬しますので副作用の生じる割合は高くなります。ただし多くは口の中や舌のピリピリ感などの軽度な症状であり、概ね普段通りに過ごせることが多いです。中には喘息発作や蕁麻疹などの投薬を中断しなければならない副作用を生じたなどの報告もありますし、アナフィラキシーショックなどの最重症アレルギー反応にも注意が必要となります。
そのためもともと重症喘息や重症アトピー性皮膚炎、重症食物アレルギー、スギ以外でもアレルギー反応が強いなどのアトピー素因の高い方に関しては副作用出現のリスクが高くなりますので、当院では治療は行なっておりません。
また、高血圧治療にてβ遮断薬という薬を使用していると副作用出現時に対応に支障が出る場合があるので、こういったケースでも治療はお薦めいたしません。
舌下免疫療法の効果は個人差があります。スギ花粉症の方でも全ての方に十分な効果が期待できるわけではありません。花粉症症状が出なくなる方もいれば、効果が無効の方もみえます。また花粉の飛散量も年度によって異なりますので、前シーズンとの単純な症状の比較がしにくいといった問題もあります。
効果は最初の数年は治療年数により高まるとされています。最初のシーズンで効果を感じられなくても、次のシーズンで効果が出現する可能性もありますので、まず2シーズンは投薬を行うことをお薦めしています。
効果が出る方でも、花粉飛散のピーク時には対症療法薬を併用していただく可能性があります。その場合でも対症療法薬を例年よりも弱い薬に変えられる場合が多いです。
最後に、治療をどれだけ続けるか、という問題があります。
今までの研究で舌下免疫療法を3年間継続した場合、中止後も2年間治療効果が持続したという報告があります。また、4〜5年継続した場合、中止後も8年効果が持続したという報告があります。
そのため、3〜5年の治療継続がすすめられると考えられており、おおよそ治療期間の倍くらいの期間の効果継続が見込まれます。
治療終了後に症状が再燃したら、また1〜2年の再治療を行います。