今年はスギ花粉の飛散量が多く、「ここ数年は市販薬で対応できていたのに今年は症状がひどく市販薬で対応できない」、「今まで花粉症と言われたことはないが、今年から花粉症を発症したよう」と言った意見が多く聞かれました。特に飛散量のピーク時には、抗アレルギー薬の内服治療、点鼻・点眼治療を併用していても、アレルギー反応の方が薬の効果を上回ってしまい、花粉症症状に苦しまれた方も散見されました。
スギ花粉症の苦しみを実感された今、皆様にお伝えしたい治療があります。それが「スギ花粉の舌下免疫療法」です。
これはアレルゲン免疫療法と呼ばれる治療で、減感作療法とも呼ばれます。
アレルギーというのは本来体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する免疫機構が、花粉などの体に害のないものに対し過剰に反応してしまう症状のことです。アレルギーの原因となる花粉などの物質をアレルゲンと言います。このアレルゲンを少量から体に投与することで体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる治療です。
通常、花粉症の治療として病院やクリニックで処方される抗アレルギー薬はあくまで対症療法であり、アレルギー反応を薬で押さえ込んでいる治療であり、アレルギー反応を減じさせることを目的とする免疫療法は従来の治療とは根本的に異なっています。
当院で行なっているアレルゲン免疫療法が近年話題になっている舌下免疫療法です。
舌下免疫治療の具体的な治療方法としては、スギのアレルゲンの治療薬を舌の下に置き1分間保持をした後、飲み込む、これだけです。その後、5分間はうがいや飲食を控えていただく、服用前後2時間程度は激しい運動、アルコール摂取、入浴を避けていただくなどの制限があります。これは副作用の出現をできるだけ抑えるための配慮です。
ただし大事な点は、この治療はスギ花粉症の時期だけではなく、1年中毎日の投薬が必要となることです。そのため、今この時期に舌下免疫療法を考えてもらうことが大切です。喉元過ぎれば熱さを忘れてしまいます。1年中、治療を継続して行うためには相応のモチベーションが必要となります。スギ花粉症に苦しんだ記憶が鮮明な今こそ、来年のこの時期を心穏やかに過ごすためにこのような治療があることを知って欲しいのです。
特にスギ花粉症があり、来年受験生の方。受験シーズンはまさにスギ花粉シーズンです。花粉症に対して事前に対策してもらうことも、受験に対する備えになるかと思います。
スギ花粉症の舌下免疫療法はスギ花粉の飛散時期には新規導入は行なっていません。来シーズンに向けた治療は6月以降開始していきます。興味のある方は是非受診してください。